2013年 10月 06日
オヤマノエンドウ |
白馬岳は ツクモグサ コマクサなどの希少植物や ハクサンコザクラ チングルマなどの高山植物が群生し
夏は多くの登山者を集める 花の名山である
写真は、栂池から入山し、白馬大池の山小屋をベースに開催した「花と花のある風景」の撮影会の折りの1枚である。
花の名は「オヤマノエンドウ」、いわゆる「御山の豌豆」である。「御山」とは、立山、白山、乗鞍などの崇高な山の美称であり、エンドウは「豌豆」そのままである。
同じ仲間のグリーンピースや絹鞘豌豆なら食用として大いに利用されているが、オヤマノエンドウは「アルカロイド」の一種である毒を含み、食べると中毒するらしい。しかし、大量に食べたならという話であって、私には経験がないし、国立公園内では葉っぱ1枚たりとも採集が禁止されている。
本州中部山岳地帯の、高山の礫地に生え、草のように見えるが、実は「低木」である。枝は10㎝程で地に張り付くように伸び、枯葉の基部は落ちることもなくびっしりと残る。これが厳しい冬に耐える防寒対策となっているのだろうか。仲間にはエゾオヤマノエンドウは北海道の高山帯に、ヒダカエンドウが同じ北海道の日高山系に分布している。
この花の撮影のとき、「今朝、麓の猿倉小屋から大雪渓を登り、今日は大池山荘まで」という二人の女の子を連れた家族連れが私の横を通り過ぎていった。撮影を終え、大池山荘に戻る途中、三国境を過ぎたあたりでお姉さんが歩けなくなり、その家族が途方に暮れていた。夏山と謂えども、家族にとって白馬岳は厳しく、その子にはつらい試練となった。
黒部川を越えて稜線に霧が舞い上がる。まもなく、山は色を失い、視界は閉ざされるだろう。私はその子を背負い、山を下る。山小屋に着いたとき、夕闇がすぐそこに迫っていた。
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by watanabe-photo-st
| 2013-10-06 07:39
| 野の花と樹と